髪を切りに行った。
この、わたしにとってのカリスマ美容師のところには、5年くらい通っている。
少し年上の男性で40代半ばのオシャレな人だ。
なんか波長が合うというか、いつも、話をほどよく盛り上げてくれる。
「いや、そういうことじゃなくて・・」
「そこじゃなかったんだけど・・」
とかいうことがない。
100%の話を微妙に盛り上げて105%で返してくれるような、なんともいえない心地よい会話が続く。
このプラス5%が複利となって、カラーが終わってカットをするころには200%にもなるかという、ゾーンに入るような心地よさを感じる。
たとえば、今日の会話でいうと、わたしがきのうの記事に書いたような
「自分にスタンドがいたら・・」という妄想も、完全に受け入れてくれ、
さらに感想に変化球を入れて返すような感じ。
スタープラチナ・ザワールド(空条承太郎のスタンド)の話で盛り上がった。
もちろん、腕も最上級。
上手く伝えられないイメージを、わたしの骨格や輪郭を見ながら、すっきりとまとめる。
できあがりはいつも、
「そう!こうなりたかったの!」と言うことになる。
このカリスマは、いつも、帽子をかぶっている。
キャップ、ニット、ハット、さまざまだけど、
帽子を脱いだ姿はみたことない。
そしてわたしは確か、コロナ禍になる前から通っていたけど、そのころからすでにマスクをしていた。
だから、毎月通っているのに、目しか見たことがなかった。
その目でさえ、いつもメガネ姿なので、印象程度のものかもしれない。
さらには、いつも鏡越しの会話ときてる。
外でばったり会ったときに気づけるかあやしい。
今日は、なんと、髪をほどいていた。
おそらく、長くていつも結んでいるんだろうな~と思っていたけど、
肩より下くらいまでの長さだった。
たぶん地毛なんだろうけど、ウェーブがかかってけっこう白髪だった。
量は少なかった。
なんていうか・・
思った通りだった。
きっとこんなんなんだろうなぁと思っていた。
帽子は今日もかぶっていたので、頭の上のほうはどんな様子かわからないけど、
思っていたとおりに収まるってのは、不思議と安心するもんだなと思った。
触れていいのかダメなのか・・
そう思いながら関係ない話をしていたけど、
思い切って「今日は髪の毛おろしてるんですね」と言ってみた。
どんな顔するかな、嫌がるかな。
言うのやめればよかったかな。
一瞬でいろんな考えが過ぎる。
今まで何度も美容室を変えてきた。
こんなに、腕も良くて、話も楽しくて、居心地のいいところは他にない。
カリスマのご機嫌を損ねてしまっては、わたしは美容室難民になるかもしれない!
やっぱり、言うべきじゃなかったか・・
「そうなんですよ!あっそうですよね、いつも、結んでますもんね!実は今日は・・
特に何もなかったけど、こうしてみたんですよ~!!」
って嬉しそうにしゃべっている。
気づいてくれた!感が伝わってくる。
そして、特になにもなく、気分で今日はこの髪型なんですね。
「や~よく言われるんですよ!帽子の中どんななんですか~?とか(笑)」
なんだ。普通に話題に上らせてよかったのね。
知らなかった、5年間も。
てか、そんなダイレクトに聞いちゃう人いるんだ?
びっくり。
いや~またわたしの考えすぎってことよね。
他人から、ドカドカ土足で踏み入れられる事が大の苦手なわたし。
なんかぎょっとするようなことを言われると、
その場で一旦凍り付き、
家で解凍されたのち、また思い返し追体験をして永久凍土へ・・
ってことが今まで何度もあった。
ま、これは自分の場合っていうだけだもんね。
それこそ、相手のことを考えすぎて、「聞かれたらいやなんじゃないかな」って、自分と同じように気遣わないといけないって思い過ぎるのも、わたしの思い上がりなのかもしれないね。
だって話して、通じ合えた方がきっとお互いに楽しい。
だから、実は・・って感じで言ってみた。
「髪型のこと、聞いたらいけないんじゃないかって思ってたんですよ。
触れたらいけない聖域のような、サンクチュアリっていうんですかね(笑)
見てしまったら二度と来られなくなるんじゃないかって、勝手に想像してました」
カリスマは、腹を抱えて笑っていた。ころげまわるくらい。
いつもと違う髪型をして来た日なら、男性であれ女性であれ、誰だって気にして話題にしてほしいよね。
自分のフィルターを通してみるから思い込みが発生するのであって、よくよく、俯瞰してみれば、なんてことはない。
初対面なんていう間柄じゃない。
ゆっくり、相手の話を聞きながら、様子を見て、知りたいことは質問すればいいんだよね。
「ちょっと聞いてもいいですか?」って前置きしてみるとかさ。
今日はたかだか髪型の話だったんだけど、髪型を聞いてはいけないっていう観念は、多分わたしが長年看護師をしてきたからだろうと思う。
若い世代も抗がん剤で髪が抜け、帽子を脱ぐとツルツルだなんていう場合もたくさん見てきた。
でも、こんな病気に根差した問題でさえ、聞いてもらって構わないわよっていうスタンスの人もたくさんいる。
わたしはその人じゃないから、わたしの内で考えてもなにも解決しないんだよね。
でも、勇気を出して、少し聞きにくいことも聞いてみたら、フィルターがとっぱらわれてもっと楽しい会話に発展することも大いにありうる。
でも、これは、言ってみるという勇気をだした人だけ。
明日は今日より、半歩だけ前に進もう!
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